改めて、小売事業者Aさんが仕入先Bさんから商品を仕入れて消費者に販売する場合、Bさんがインボイス(適格請求書)発行事業者の登録をするか、しないかでAさんの消費税納税額と利益がどのような違いがあるのか見てみましょう。

                8万8千円(消費税8千円)    11万円(消費税1万円)

   Bさん→→→→→→→→→→→→Aさん   →→→→→→→→→→→消費者

  (仕入先事業者)       (小売業)

             【Bさんがインボイス発行事業者の場合】

    ※Aさんの消費税納税額=1万円-8千円=2千円

              ※Aさんの利益=11万円-8万8千円-2千円=2万円

   【Bさんがインボイス発行事業者でない場合】

              ※Aさんの消費税額=1万円(8千円は控除できない)

              ※Aさんの利益=11万円-8万8千円=1万2千円

Aさんとしては仕入先Bさんがインボイス発行事業者であったほうが有利であるということになりますね。もし、Bさんがインボイス発行事業者としての登録をしていないのであれば(法的に有効なインボイスを発行してくれないのであれば)Aさんは「登録してください」と交渉したくなる気持ちになると思います。しかし、Bさんにとっては納めなくても良かった消費税を納付することになるデメリットが生じてしまうことになるので、Aさんが交渉を進めることが、独占禁止法における「優越的地位の濫用」(取引上有利な立場にあるAが不利益をBに強制していると見做される)に該当してしまう可能性があるため、注意する必要があります。

※なお、Aさんが簡易課税制度を選択している場合は上記の例は当てはまりません。